2011年9月3日土曜日

青空文庫

青空文庫というのは、主に著作権の切れた書籍をテキストファイルとして無料で配信するサービスである。その存在自体はずいぶん前から知っていたのだが、テキストファイルのため通常ではメモ帳によって横書きに表示され、ルビなどは括弧内に表示されるなどの事情から利用したことがなかった。

しかし最近になって、青空文庫のテキストファイルを読みやすく整形してくれるビューワーソフトがあるということを知り、試してみた。

ネットで検索するとたくさん種類があるのだが、今回導入したのはBE-i氏による「窓の中の物語」というソフト。実際の本のように右ページと左ページに分けて表示することが出来、ルビもきちんとした形になる。また、ページめくりのアニメーションがあるのが気に入った。

他のソフトもいくつか試してみたがノベルゲームのように自動送りができるものなどもあり、なかなか楽しい。

で、記念すべき青空文庫第一号として何を読んだかというと、田山花袋の『蒲団』である。中学や高校の国語の授業で文学史をやると、自然主義の作品として挙げられる作品で、ラストに主人公が女弟子の使っていた蒲団の匂いを嗅ぐ描写が有名である。しかしこの描写だけが有名で、実際に読んだことのある人は意外と少ないのではないだろうか。

有名な作品というのはしばしばこういう事態に陥るようだ。『蒲団』は結末が有名だが、川端康成の『雪国』のように冒頭文だけが独り歩きしていると思われる作品も多い。

そんなふうにラストだけ知って満足されてしまいがちな『蒲団』だが、通読してみたらとてもおもしろい作品だった。結末部だけをきくと、主人公はただの変態だが、通して読むとそれだけではないということがわかる。まぁ変態ではあるだろうが…。明治40年とずいぶん古い作品だが、そこまでの読みにくさはなく、そう長い話でもないのでぜひ読んでみてほしい。また、『蒲団』が私小説、つまり作家が自分のことを描いた作品であり、登場人物にはモデルがいたということを念頭に置けば、さらにおもしろく読めるだろう。


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